親の介護が必要になったとき、最初に気になるのは「いくらかかるのか」という問題です。

在宅介護なら安く済む、老人ホームに入ると高い、というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし実際には、在宅介護にも見えにくい費用や家族の時間負担があります。

介護費用は、本人の年金や貯金だけで足りるとは限りません。子ども世代が一部を負担する場合もあります。親の介護で家計を崩さないためには、在宅介護と施設入居の違いを早めに把握しておくことが大切です。

介護費用は毎月の支出と一時費用で考える

介護費用を考えるときは、毎月かかる費用と、最初や途中で発生する一時的な費用に分けて見る必要があります。

毎月の費用には、介護サービスの自己負担、食費、日用品費、通院費、紙おむつ代などがあります。施設に入る場合は、月額利用料、居住費、食費、管理費、介護サービス費、医療費などが加わります。

一時費用としては、住宅改修、介護用ベッドの準備、車いす、手すり、入居一時金、引っ越し費用などがあります。親の状態が急に変わった場合、短期間でまとまったお金が必要になることもあります。

在宅介護にかかる主な費用

在宅介護では、介護保険サービスを利用することで自己負担を抑えられる場合があります。訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与などを組み合わせながら生活を支える形です。

ただし、在宅介護の費用は介護保険サービスだけではありません。家の中を安全にするための手すり設置、段差解消、介護ベッド、ポータブルトイレ、見守り機器などが必要になることもあります。

家族の移動費や時間も負担になる

親が近くに住んでいれば負担は軽く見えますが、通院付き添い、買い物、薬の管理、役所手続きなどで家族が頻繁に動くことになります。

遠方に住んでいる場合は、交通費や宿泊費もかかります。仕事を休む日が増えれば、収入や働き方にも影響します。金銭的な支出だけでなく、家族の時間と体力を使っている点も見落とせません。

施設入居にかかる主な費用

老人ホームや介護施設に入る場合、毎月の利用料が大きな支出になります。

施設の種類によって費用は異なりますが、一般的に確認したいのは、入居時費用、月額利用料、介護サービス費、医療費、日用品費、理美容費、レクリエーション費、通院付き添い費などです。

介護保険施設を利用する場合でも、介護サービス費の自己負担に加えて、居住費、食費、日常生活費が必要になります。有料老人ホームでは、施設ごとに料金体系が異なるため、パンフレットだけでなく重要事項説明書の確認が欠かせません。

在宅介護と施設入居の違い

項目在宅介護施設入居
費用の特徴介護保険サービスの利用料に加え、介護用品や住宅改修費がかかる月額利用料、居住費、食費、管理費などがまとまって発生する
家族の負担見守り、通院、買い物、緊急対応などを家族が担いやすい日常介護は施設が担うため、家族の身体的負担は軽くなりやすい
本人の生活住み慣れた家で暮らしやすい介護スタッフの支援を受けながら生活できる
注意点夜間や認知症対応が家族に偏りやすい費用、立地、医療対応、空室状況の確認が必要

費用だけで在宅介護を選ぶと苦しくなる

在宅介護は、親にとっても家族にとっても自然な選択に見えることがあります。しかし、介護度が上がるほど、家族の負担は重くなります。

夜間のトイレ介助、転倒への不安、認知症による外出、火の不始末、薬の飲み忘れなどが出てくると、家族だけで支えるのは難しくなります。

費用を抑えるために在宅介護を続けた結果、介護する側が体調を崩してしまうこともあります。介護は長期化することがあるため、家族が倒れない仕組みを考えることも重要です。

施設入居を検討する目安

施設入居は、親を見放すことではありません。本人の安全と家族の生活を守るための選択肢です。

たとえば、転倒が増えた、認知症で見守りが必要になった、夜間対応が続いて家族が眠れない、通院付き添いが頻繁になった、食事や服薬管理が難しくなった場合は、施設入居を検討する時期といえます。

まだ在宅で過ごせている段階でも、地域の老人ホームや介護施設の費用を調べておくと、いざというときに慌てず判断できます。

親の年金と貯金だけで足りるか確認する

介護費用を考えるときは、まず親本人の年金、預貯金、保険、持ち家の状況を確認します。そのうえで、足りない場合に子どもがどこまで支援できるのかを話し合います。

兄弟姉妹がいる場合は、誰か一人に負担が偏らないようにすることが大切です。お金を出す人、通院に付き添う人、施設探しをする人など、役割を分けておくと不満がたまりにくくなります。

早めの情報収集が家計を守る

親の介護費用は、始まってから考えると判断が遅れやすくなります。焦って施設を探すと、費用や条件を十分に比較できないまま決めてしまう可能性があります。

在宅介護と施設入居の差は、単純な金額だけでは判断できません。家族の時間、体力、親の安全、医療対応、認知症対応まで含めて考える必要があります。

老人ホームや介護施設の資料を取り寄せ、費用の内訳を見比べておくことは、将来の大きな備えになります。

出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム生命保険文化センター