親に認知症の症状が出てくると、施設選びで確認すべき点は大きく変わります。

費用や立地だけで老人ホームを選ぶと、入居後に対応が合わず、家族が再び悩むことがあります。

認知症の介護では、物忘れだけでなく、夜間の不安、外出、服薬管理、食事、入浴、排せつ、周囲との関わり方など、生活全体を支える視点が必要です。親が安心して暮らせる介護施設を選ぶために、確認したいポイントを整理します。

認知症対応は施設ごとに差がある

老人ホームや介護施設であれば、どこでも同じように認知症対応ができるわけではありません。

軽い物忘れの段階なら受け入れ可能でも、徘徊、夜間の不穏、暴言、介助拒否などがあると対応できる施設が限られる場合があります。

施設を探す際は、「認知症の人も入れますか」と聞くだけでは不十分です。どの程度の症状まで対応できるのか、夜間はどのような体制なのか、医療機関との連携はあるのかを具体的に確認する必要があります。

グループホームという選択肢

認知症の人の施設として、グループホームがあります。グループホームは、認知症のある高齢者が少人数で共同生活を送りながら、介護スタッフの支援を受ける施設です。

家庭的な環境の中で、食事や掃除など日常生活に関わりながら過ごすことを重視します。大規模な施設よりも、落ち着いた環境が合う人もいます。

ただし、グループホームは原則として施設のある市区町村に住んでいる人が対象になるなど、利用条件があります。また、医療対応が必要な場合は受け入れが難しいこともあるため、本人の状態に合うか確認が必要です。

認知症の親の施設選びで見るべき項目

確認項目見るべき内容
認知症対応徘徊、夜間不穏、介助拒否などにどこまで対応できるか
夜間体制夜勤職員の人数、見守り方法、緊急時対応
医療連携協力医療機関、訪問診療、服薬管理、看護師の配置
生活環境居室、共有スペース、動線、安全対策、落ち着ける場所
看取り対応状態が進行したときも住み続けられるか
家族との関わり面会ルール、連絡頻度、急変時の連絡体制

夜間体制は必ず確認する

認知症の介護で大きな不安になるのが夜間です。

昼間は落ち着いていても、夜になると不安が強くなったり、部屋から出て歩き回ったりすることがあります。トイレに行こうとして転倒することもあります。

そのため、夜勤職員が何人いるのか、何フロアを担当するのか、見守りセンサーを使っているのか、緊急時に看護師や医師へ連絡できるのかを確認しましょう。

パンフレットでは分かりにくい部分なので、見学時に具体的な事例を聞くことが大切です。

医療対応と服薬管理を確認する

認知症の親は、糖尿病、高血圧、心臓病、整形外科の疾患など、ほかの持病を抱えていることがあります。

施設によって、看護師が日中だけいる場合、24時間体制に近い場合、外部医療機関と連携している場合など体制が異なります。

服薬管理、通院付き添い、急な発熱、転倒後の対応、入院後の再入居可否も確認しておきたい点です。医療対応が弱い施設を選ぶと、状態が変わったときに転居が必要になることがあります。

看取り対応の有無も早めに聞く

施設を探す段階で看取りの話をするのは、気が重いかもしれません。

しかし、認知症は長く付き合うことが多い病気です。状態が進行したときに、その施設でどこまで生活を続けられるのかを確認しておくことは大切です。

看取り対応がある施設でも、医療処置の内容によっては対応できない場合があります。本人や家族がどのような最期を望むのか、早い段階から考えておくと、施設選びの基準が明確になります。

本人の落ち着きやすさを見る

認知症の人にとって、環境の変化は大きな負担になることがあります。

施設見学では、設備の新しさだけでなく、本人が落ち着いて過ごせそうかを見ます。共有スペースの雰囲気、職員の声かけ、入居者の表情、生活音、におい、照明の明るさなども大切です。

豪華な施設が必ず合うとは限りません。本人の性格や生活歴に合う環境を選ぶことが重要です。

費用と追加費用を確認する

認知症対応のある施設では、見守り体制や個別対応が必要になるため、費用の内訳を丁寧に確認する必要があります。

月額利用料に何が含まれているのか、紙おむつ代、医療費、薬代、通院付き添い費、理美容費、レクリエーション費などが別料金になるのかを見ます。

入居時に払えるかだけでなく、数年続けても無理がないかを考えることが大切です。

家族だけで抱え込まない

認知症の親の施設選びは、精神的な負担が大きいものです。親を施設に入れることへの罪悪感や、兄弟姉妹との意見の違いで悩むこともあります。

ケアマネジャー、地域包括支援センター、医師、施設相談窓口などに相談しながら進めると、本人の状態に合う選択肢を整理しやすくなります。

早めに資料を集め、認知症対応、夜間体制、医療連携、看取り対応を比較しておけば、いざというときに落ち着いて判断できます。

出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム 認知症対応型共同生活介護厚生労働省 認知症対応型共同生活介護資料